末期がんになって3ヶ月
私はひたすら懐かしのビデオを見続けた
子供だった頃流行っていたドラマ、お笑い、映画、バラエティ番組、歌番組
今見ても面白い
しかし色鮮やかに映し出されたこれらの映像に、存命の者は居ない
観客席に居る彼らもほとんど死んだだろう
不思議な気分だった
画面の中では皆が生き生きと、笑い、泣き、演技し
その度にポップなテロップが出る
しかし皆死んでいるのだ
私も年を取りすぎたのだろう、デジタルネイティブだからと言ってずっと時代に付いていけるわけではない
唐突に目頭が熱くなった
画面はお笑い番組を映し出していた
これではまるであの世を覗く鏡だ
この画面が、もう死んだ時代と、まだ生きている時代の境界線になっている
どちらに存在していたいのだろう
考えるまでもなかった
私は医者の元へと向かうため、ようやく重い腰を上げた