弁護士の一部に読点として「,」を用いる人がいること及びそのようになった経緯については、概ね記事の通りだとは思う。
ただ、弁護士の大半がそうしているかのようなタイトルには違和感を覚える。
記事中にも全ての弁護士が「,」を用いるわけではないとの記載があるが、ブコメで「,」を用いるのが弁護士の大半であるかのような誤解が散見されるので訂正しておきたい。
職業柄、多数の弁護士の書面を見る機会があるが、体感では「,」を用いる弁護士は全体の半数以下である。
正確に数えたわけではないし、サンプルに偏りがあると言われればそれまでだが、それでも全国的に大多数の弁護士が「,」を使っているとはいえないのではないか。
弁護士以外には、「,」を用いる人はそう多くはない。
(本人訴訟のベテランの方だと使っていたりすることもあるが…)
そのため。「,」を用いていれば弁護士作成の文書だという推認はある程度合理性があるといえるだろう。
他方、「,」を用いていないから弁護士作成の文書ではない、という推認は成り立ち難いのではないかと思う。
また、記事中では、「,」を用いる理由として、裁判官がコピペしやすいことが挙げられているが、これも疑問である。
そもそも、裁判官が弁護士に準備書面のデータの提供を求めること自体そう多くはない。
その上、裁判官が準備書面の記載をコピペするかどうかを決める際の考慮要素として考えられるのは、データ提供を求める手間(実際にやりとりをする書記官の手間も含む。)、コピペによって省ける手間、コピペによって失われる文章のニュアンス、コピペした文章の細部を訂正する手間あたりであって、記事にもあるが、置換一発で解決する読点の問題が決め手になることは考えにくい。
「,」が用いられる理由としては、記事中に指摘されている裁判所の要請と慣習以外に大した理由はないのではないかと思う。
以上、なぜ〇〇なのか、と言われたときは、そもそも本当に〇〇なのか疑わないといけない、という話。