2016-06-12

村八分お話

長年、村の中で村八分にしてきた人間がいた。

礼儀正しく、控えめで、誰も、特に事実として何か悪さをされたこともないのだけど、村の中では突出して頭がよかった。博識で何でも知っていて知恵をくれた。

しかし、周囲からは恐れられ妬まれあいつには近づくな」とか、「村の全員から嫌われている奴だ」とか、根も葉もない噂が広まっていた。村人は全員その噂に飲まれ、全員でいじめた。いじめはひどいものだった。家に泥を巻き、どなり散らし、みんなの前でからかって、笑ったりもした。

しかし、ある時、村で、特殊流行り病が広がった。これまでに見たことのないような特殊な症状で、突然、狂ってゾンビになり、他の村人に噛みついて仲間にする、という伝染病だった。


村人は、多くの医者を訪ね回ったが、誰一人として直すことができなかった。そんな時、実は、長年、村で村八分にして、いじめてきた

人間が、その病気の直し方を知っているらしい、という噂が広がりだ

した。村人みんなも、「あいつなら、頭がよすぎるので、知っているかもしれない」と納得するぐらい説得力のある噂だった。


実際に、その人は直し方を知っていた。それは、その人が苦労の末に、発見した特殊治療薬を飲むことだった。


いつも、いじめてきた人間だったが、村の人は、困ったことが起きると、その人のもとに、助けてもらいにいかないといけなかった。

そして、村人は薬をもらい、病気を直し、いつもどおりの平和を取り戻した。そしてまた村八分が再開した。

なぜなら、病気を直してもらったかもしれないが、その病気を作り出したのもそいつのしわざじゃないか、という噂も広がったから。

もちろん、まったくの濡れ衣だった。

しかし、なぜそんなことが起きるかというと、

村の人の心の底では、長年いじめてきたという事実があって、

自分は恨まれているんじゃないかという恐怖感を、膨らませることになったから。そのため、何か良くない事が起きれば、村八分されるさんのせいだと思うようになっていったのだ。

物語の捕捉

村八分されるさんは、勤勉で博識で親切だった。実は信仰心を持っていたかなのだが、村の人間信仰心がなく無知なので、村八分されるさんの勤勉さや博識さが、何をモチベーションとしているのか謎で、恐怖だった。

村八分されるさんは、実は、いわゆる村の神父さんの

よな存在だったのだが、村の人間民度が低すぎて、ただただ恐れていたのだった。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん