旅行や出張などで見知らぬ駅に降り立ったとき、真っ先に確認するのは北の方角。
どうやら常に北の方角をゆるーく意識しているらしく、初めて目にする景色でも「北はきっとあっちに違いない」と決めつけてしまう。
8~9割方は合っていて、ものすごい安心感に包まれるんだが、まれに間違うときがあって、そんなときは地面がぐらぐらするような感覚におそわれる。
自分の思い込みと実際の方角を調整するのは、思いのほか大変だ。遅れてしまった古い時計台の歯車を直すように。
深呼吸をしてじわじわと内なる方角を調整し、地図上の方角とぴたりと合わせてから目的地へ向かって歩き出す。
普通の鉄道だと内なる方角が狂うことはまずない。乗車している間、無意識に方角を調整しているのだろう。
危険なのは地下鉄だ。エレベーターや階段を何度も折り返しているうちに方角を見失うことが多い。
もちろん、カーナビの画面は常に北が上。カーナビの機能で最も優れているのは、北を指し示してくれることだと思う。
会社の車なんかだと、先に乗っていた人が進行方向を上に示す画面表示にしていることがあって、そんなときはひどく混乱する。画面がぐるぐる回るとか正気の沙汰ではない。
あのようなぐるぐる画面を頼りにしていたら、いつまでたっても道を覚えられないと思うんだが。