いつものごとく、昼間から何もすることがなかった。だから、何年も住んでいる町で、僕は消えた猫を探してみる旅に出ようと思った。
僕の猫ではない。知らない家の猫である。僕の家の近くに電柱がある。そこにずっと前から、写真入りのポスターが貼ってあった。
「猫を探しています。。。」
突然、いなくなってしまったらしい。
僕はどんな猫なのかその猫写真を見てみた。ヘンな模様があるなというぐらいで別に普通の猫。町を行きかう人はそのポスターを誰も見ていない。
きっと猫が一匹消えたところで世界は変わらない、その通りだとは僕も思う。
だけど、ポスターの右端に、「大事な存在です。見つけ次第連絡をください」と言葉を添えてあった。強い想いが伝わってきた。
僕の家にも老犬がいる。10年以上の親友で。そして、今でも大事な家族だ。
別に、何かのボランティアでやってやろうと思ったわけではない。ただある日、思い立ったのだ。
決意したその日に、さっそく猫を探し続けた。建物と建物の間。車の下。ふと一匹だけ猫を最近見かけたことを思い出した。
あの猫は探している猫だったかもしれない。そう思い、そのあたりをたくさん探した。でも、いなかった。どこにも。
猫を探したら、飼い主が喜ぶだろうし、誰かがほめてくれるかもしれない、と思った。それは普通の感情として思う。
だけど、探しているうちに気づいた。そうじゃない。それだけじゃない。
僕はたぶん誰かの役に立ちたかったんだと思う。家にいて何もできない自分を変えてみたかったのかもしれない。
あの猫があれほど必要とされてるように、僕も誰かに強く必要とされたかったんだろう。
僕も迷子になっていたのかもしれないな。
みんな仕事や趣味や恋愛をがんばっていて、すごいねって言われている。
僕は違った。がんばってはいるけれど、家にいるから誰もそのことに気づいてはくれなかった。がんばってる僕を、探してはくれなかった。
誰かに見つけてほしかったんだ。僕はその日、自分から猫を探そうと思ったけれど、僕は本当は……そうした僕を見つけてほしかったんだ。
そしたら、ある人に、がんばったじゃないかと言われた。それだけだったけど、僕は。
だから猫。君もがんばってほしい。もうおそらく数か月以上はたってしまっただろうけど、まだ生きていてほしいと強く願う。
猫だろうとなんだろうと、誰かを探してくれない人なんていない。
お前にはちゃんと探してくれてる人がいるよ。
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