「こんなこと。」
バァアン
右手の痺れが収まるのを待ってから、俺はシリンダーを取り出す。装弾数を確認した。
「5発。」
一つだけ空洞になっているレンコン模様の穴の先に、先ほど休日をどう過ごしたかを聞いていた同僚の姿が見える。
ジワジワと首から溢れ出す血流が、回転する穴からみると、コマ切れのアニメーション映像のようだ。カクカクして目に映る。
「メタルギア。」
「...。」
撃鉄を親指でゆっくり引き起こす。ドラム状の弾倉が重々しく回転する。
銃口を彼女の眉間から離さず、アナコンダの弾丸の位置を確認する。
「左...2発」
「右...2発」
今、発射位置に弾丸は入っているのだろうか。下の位置はフレームに隠れて確認できない。
図らずも、この女は今、ロシアンルーレットを受けているのだ。
確率は二つに一つ。"当たり"か、"外れ"か。
「好きです。」
女はそう呟くと、眉毛一つ動かさず、キーボードをカタカタと叩きはじめる。
メガネに反射して白い画面が映る。俺はその白い四角の枠を眺めていた。
白と青の模様。あれはなんだろう。Webサイトだろうか。
「そう。」
バァン
外で鳩が飛び立つ音が聞こえる。
「当たったか?」
部長は葉巻を燻らせ、窓を眺める。
「ええ。」
「"当たり"よ。」
悪に堕ちる。復讐のために。