2015-09-09

休日は何をして過ごしてたんですか?」

「こんなこと。」

バァアン

撃鉄の振動が爪先から腕にジンジンと伝わってくる。

右手の痺れが収まるのを待ってから、俺はシリンダーを取り出す。装弾数を確認した。

「5発。」

シリンダー左手クルクルと回す。

一つだけ空洞になっているレンコン模様の穴の先に、先ほど休日をどう過ごしたかを聞いていた同僚の姿が見える。

ジワジワと首から溢れ出す血流が、回転する穴からみると、コマ切れのアニメーション映像のようだ。カクカクして目に映る。

メタルギア。」

シリンダーを収め、銃口を向かい側に座っている社員に向ける。

「...。」

メガネをかけた人事部の女は、パソコンから目を離さない。

撃鉄を親指でゆっくり引き起こす。ドラム状の弾倉が重々しく回転する。

そう言えば、先ほど弾丸の位置を確認していなかった。

銃口を彼女の眉間から離さず、アナコンダ弾丸の位置を確認する。

「左...2発」

女は内線を取り次ぐ。8番、お客様から電話です。

「右...2発」

今、発射位置に弾丸は入っているのだろうか。下の位置はフレームに隠れて確認できない。

図らずも、この女は今、ロシアンルーレットを受けているのだ。

確率は二つに一つ。"当たり"か、"外れ"か。

「好きです。」

女はそう呟くと、眉毛一つ動かさず、キーボードをカタカタと叩きはじめる。

メガネに反射して白い画面が映る。俺はその白い四角の枠を眺めていた。

白と青の模様。あれはなんだろう。Webサイトだろうか。

「そう。」

バァン

外で鳩が飛び立つ音が聞こえる。

つの肉塊をゴム袋に包み、Vの字に並べる。

「当たったか?」

部長は葉巻を燻らせ、窓を眺める。

「ええ。」

床に無造作に置かれているアナコンダを眺め、そう答える。

シリンダー右側に、"穴"が一つ、ポッカリと空いている。

「"当たり"よ。」

悪に堕ちる。復讐のために。

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