ついさっきのことだ。
長年かけてコレクションしていたある商品の新作が、限定版で発売されるという。
その発売日は奇しくも今日であり、発売自体は随分前に発表されていて、既に予約殺到で押すな押すなの大盛況だそうである。
俺はそれを今日初めて知った。
プレミアがついておいくら万円です、っていうのはいくらでも見かける。
だがこっちは寝耳に水なのである。新作出るなんて聞いてない。知ってたら予約してた。或いは財布と相談して頑張って諦められた。
知らなかったばっかりに同一商品を手に入れるために割増料金払いたまえなんてそんな横暴な、ご無体な、唐突な、殺生な。
転売屋に足下見られて吹っかけられてるとわかっていながら買うなんて死んでもごめんである。
検索して、検索して、検索して、ふと思いついて実店舗にも電話かけて、あちこち問い合わせて探しに探した。
結果、たった一店舗だけ見つかった。
電話口の「予約しますか?」の問いに、「はい!」と喜んで答えた。
とたん。
手に入れられないかもという焦りと恐怖とともに。
ビビった。
まるでろうそくの火が消えるようだった。
しかしハイと答えちまった以上、また事実としてプレミアものが出回っている以外にお目にかかれていないという現状を踏まえては、「やっぱりいいです」とはとても言えず、結局取り置きの手続きをしてもらった。
冷静に考えたら、その金だって俺の手取りじゃあ決してポンと出していい額ではない。月の食費は消し飛ぶ計算だ。
しかしもう出さねばならない。俺が出すと決めたのだ。たった今。まったくの独力で、誰の干渉もないままに。