僕の町はど田舎です。娯楽施設なんて何一つなく、ただただ雄大な自然が、端的に言ってしまえば山ばっかりが町を囲っています。
人口は千人あちこち。移動に車は必須で、大きな買い物をするためには逐一近くの大型ショッピングモールにいかねばなりません。
場所によっては携帯も繋がらない。光回線だって通っていない。冬には雪が降り積もり、色々とお金も人でも必要なのに、仕事はないわ魅力はないわで色々と積んでいるよくある田舎町なのです。
そんな田舎町の、更に奥まった場所に、バブル期の名残でもあるホテルが建っています。僕はそこで厨房の手伝いをしています。
その他に働いている従業員は皆都市部出身。額面通りの都市ではないにせよ、僕の町よりはよっぽど発展した町からやってきた人々たちばかりです。
そんな人達が、ことあるごとに言う訳です。ここは辺鄙な場所だと。娯楽は少ないし、何かと不便であると。
その通りなんです。その通りなんですけど、なんだか腹立たしいのです。
僕の中に郷土愛なんてものがあるからなのかもしれません。あるいは、お前たちがそれを言うなよと思ってしまうからなのかもしれません。
持てる者だからこそ知っている優越感に、無意識の内に反発してしまうのです。
この感情は、だから僻みと紙一重なのでしょう。もしかすると嫉妬なのかもしれませんし、羨望なのかもしれません。度が過ぎれば憎しみに変わることもあるかもしれません。
僕個人としては、少なくとも表面的にはどうでもいいと感じているにも関わらず、です。
最初から持てる者として生まれた人が、自身の当然を口にするときは注意が必要です。たとえどれだけ相手が気を許しているように見えても、その実傷を与えているとも分からないからです。
ヘラヘラ笑っているその裏で何を考えているのかはわからない、などというつもりはありませんが、自らの当然が当然足りえる空間を認識する必要はあると思うのです。
そんなにねじくれるくらいだったら一度都市部に出ればいいのに。
「田舎」から色んな意味でお客さんが来なければ成り立たない、それが都会の実情です。 時々それをはき違えてる自称都会人も残念です。 「都会」に住む人も「遊ぶためにここに住ん...