「偏狭な民族主義」を含む日記

■ウクライナでプーチンが見誤っていたこと

ウクライナ人は「国民」だった。

たぶんプーチンが考えていたであろうこと

• ウクライナ人とロシア人はもともと同じ民族（ルーシ）が分かれたもの
• したがって、ウクライナ人が文化的にロシアから分かれようとするのは偏狭な民族主義だ
• しかも、ウクライナ東部には多くのロシア語話者がいる。彼らは民族主義者による「ウクライナ化」によって苦しんでいる
• ウクライナ人は国民として団結していない。国内で歴史は違うし、言語も違うし、アフガンみたいに帰属意識はバラバラだ
• よって、ウクライナのロシアからの分断を図ろうとする偏狭な民族主義者を政権から追い出せば、親ロシア的な政権を作れるかもしれない

実際には

• 確かに、ロシア人とウクライナ人とベラルーシ人は、昔（日本でいうと平安時代～鎌倉時代くらいまで）は同じルーシだった
• しかし、近代以降に育った「ウクライナ人はロシア人とは別」という意識は思った以上にウクライナに根付いていた
• 東部のロシア語話者も、「ロシア語を話すウクライナ国民」だった。ロシア人だけどウクライナという国に忠誠を誓っていた
• 国内に様々な亀裂はあり、親ロシア派も大勢いたのだが、なんだかんだで「同じウクライナ国民」としてまとまっていた
• したがって、現大統領の政敵たち（≒傀儡政権の駒になりそうな人たち）も続々と徹底抗戦を表明して銃を取った
• ウクライナは帰属意識がバラバラでちょっと介入すればすぐに分裂して内戦が起こるような（アフリカによくある）分断国家じゃなかった。ロシア語を話すウクライナ人とウクライナ語を話すウクライナ人にとっての守るべき祖国だった
• 分断国家にちょっとちょっかいをかけて崩壊させて傀儡政権を樹立してさっさと引き上げるだけのつもりが、まさかの国対国の全面戦争になってしまった

クリミアはどうなの？

• クリミアの意識はウクライナ本土とはまた違っている
• クリミアは元々ウクライナの一部ではなく、ソ連初期はロシアに属す自治共和国だった
• ところが、フルシチョフ時代にトップダウンの決定でロシアからウクライナに移管された。ソ連時代は「まあ別に同じソ連だし」ってことで特に問題はなかった
• しかしソ連がなくなったことで、ロシア系住民は「俺たち、ロシアと別の国になるとか嫌なんだけど！」と言い始めた
• クリミアの自治共和国としての地位はウクライナ独立後も維持されていた。なのでウクライナの中でもウクライナ人意識が弱い地域
• 仮に国際的な選挙監視団入れて公正な住民投票やったとしても「ロシアへの編入」を選ぶ人はそれなりにいるんじゃないだろうか。ここは公正な住民投票やった上で独立やロシアへの編入を認めてもいいと思う。もちろん一旦ロシアが撤兵し亡命者の帰還を認めるのが大前提だけど

じゃあなんでウクライナ人は「国民」になったの？

• 独立から何十年も経ち、権威主義国家の隣で民主的選挙をやっていたということがなんだかんだで大きいと思う。選挙は「国民」を作り出す儀式でもある（台湾と同じ）
• もちろんロシア語話者に不満がなかったわけじゃないだろうけど（彼らとしてはウクライナ語の促進政策は不便になるので）、あくまでウクライナの国内問題だった
• とはいえ最も大きいのは、絶え間なく軍事的圧力をかけてくる近くの国の存在だろう。共通の敵の存在は人びとを団結させる
• ロシアの軍事介入前は「親欧米か親ロシアか」というのが大統領選挙の争点になったこともあったんだから、余計なことしなけりゃ普通に選挙で親ロシア政権ができる可能性は残ってたと思うけど、もう親ロシア派が選挙で勝つとか無理ですよね。自業自得

Permalink | 記事への反応(5) | 14:05

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