2023-09-16

二人の姉弟が築いた王国

あるところに姉弟により築かれた王国があった

姉弟はもともとは、ただ花のつぼみを集めて売ることをしていた

弟は近所の原っぱから綺麗な花のつぼみを見つけるのが上手だった

弟が見つけてきた花のつぼみカラフルな色をしていたが

どれも根元のあたりはぷっくりと膨らんでいて

先っぽの方はくるくるっとうずまきのように花びらが巻かれていた

鼻を近づけると濃厚な甘い蜜の匂いがした

弟は原っぱでつぼみを見つけてきては、姉に渡した

姉はそれらをデコレーションし、適切な値札をつけ多くの人に売った

それはとても綺麗な花のつぼみだったので、みんなが欲しがったのだ

弟は気に入った花のつぼみは姉に渡さずに、こっそりと自分のものにしていた

家に帰ってから自分の部屋の引き出しにしま

誰もいない時につぼみを手に取りうっとりと眺め、匂いを嗅いだ

しばらく眺めると我慢できないかのようにつぼみに口をつけ、ちゅーちゅーと甘い蜜を吸った

つぼみの甘い蜜が舌の上にこぼれ落ち、口の中を甘い香りで満たした

飲み込むと、どろっとした蜜が食道を通り胃に落ちていくのを感じることができる

その快感に思わずから息をもらすと、自分自身が花になったかのような濃厚な香りを感じることができた

弟にとってそれは若き生命のものを飲んでいるような喜びの時間だった

甘い蜜を吸われた花のつぼみなかには、そのまま枯れるものもあったが

それを弟はまるで最初から興味がなかったかのように窓からぽいと捨てた

なにしろ原っぱに行けば、またきれいな花のつぼみはすぐに見つかるのだ

枯れたつぼみは、窓の外の日が当たらないじめじめとした土の上に捨て置かれた

甘い蜜を吸われても、生き生きとしていたつぼみはそのまま姉に渡した

姉は弟がこっそりと蜜を吸っていることを知っていたが

弟のお気に入りつぼみは、特にみんなが欲しがることに気づいてからは黙っていた

ふたりの花のつぼみは評判になり、他の国からも客が訪れ、権力者への献上品にもなった

二人はそれをよりシステマティック事業として展開した

家のそば農場を作りそこで花を育てた

そうすればもう原っぱにいく必要もないし、たくさんのつぼみを集めることができた

そのまま売るだけでなく花のつぼみを使った商品も作った

つぼみ香り香水は誰もが欲しがり

花のデザインをあしらった商品は飛ぶように売れた

花のつぼみとしては信じられないような値段がついた頃にも

弟は隠れてつぼみに口をつけちゅーちゅーと甘い蜜を吸い

枯れたはつぼみは窓の外に捨てた

商人たちは、毎日姉と弟のところを訪れ、

自分商品に花のつぼみを使わせてほしいと話した

それは最初のうちは相談だったが、しだいに懇願に変わっていった

なにしろその花のつぼみがあしらわれているだけで売上が二倍も三倍も変わるのだ

そのくらい姉弟が売る花のつぼみは人々の心を魅了した

姉と弟の作った会社経済的必要からしだいに権力を帯び始めた

もちろん偽物や真似をするものも現れたが、そういった時には姉が徹底的に潰した

姉のやり方は徹底的で恐れられ、業界彼女に歯向かうものはいなくなっていった

二人が作った花のつぼみ会社小さな王国だった

姉はメディアを使いつぼみブランドコントロール

弟はつぼみを育て、ときどきこっそりと蜜を吸った

そして人々にいつまでもきれいな花のつぼみを売り続け、人々は喜んだ

何十年がすぎ、やがて窓の外に捨てられた枯れたつぼみが、窓の枠までうずたかく積もったころに

その王国で弟が死んだ

 

〜続く〜

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