2022-08-20

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上記のケースで言えば、 彼の精神失調の直接的な原因は業務上ストレスです。そのストレスを与えた責任の一端は会社にあります。もし彼が「適応障害」「うつ病」と診断されて、 自殺するようなことでもあれば、労災と見なされる可能性があります

しかし、会社からすれば、労災のような組織的責任回避したい。できれば、従業員の「自己責任」としたい。そういう組織防衛論理産業医判断を狂わせ、 「適応障害」や「うつ病」と診断するよりもまず先に「発達障害」と 診断するように向かわせているように思います

そうした産業医姿勢は全く好ましくないと私は思いますが、 この現代においては、社会病理の結果として個人的問題が起きても、 個人病理個人責任とみなす傾向が強まっているので (生活保護受給者は「自己責任」、 貧しくて進学できない子どもも「自己責任」)、 産業医会社が責められることは少ないかもしれません。


現代ストレスの多い社会精神疾患が増えている」と 言われながらも、 「発達障害」という個人的資質を強調することにより、 精神失調を来した人に「自己責任」という責任を負わせて苦しめ、 会社社会責任免除するような風潮があるように思えます

そこには、はからずも精神医学が荷担してしまっているかもしれません。(かつては統合失調症発達障害も、発病要因に 「親子関係」などの環境因を考えることが盛んでしたが、 今は障害者個人の「脳」の病理で考えるのが学会趨勢です。)

メンタルヘルス問題を診るときには、社会病理なのか個人病理なのか、 どちらもいくらかあるけどそれはどの程度の按配なのか、 と考えていくのが、臨床における良き常識、「中庸」のセンスだと思います最近つい忘れられがちですが、私たち臨床医に求められている大事センスです。

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