長年、競争相手がほとんどいない学際分野で研究してきた。当時のボスとほんの数人しか相手にしてくれなかったけど、科学のため社会のためになると信じていた。地味ながらも理論をコツコツ積み上げていい仕事をしてきたと思う。でも数年前に、アメリカの研究者がこの分野である発表をしてからいろいろ変わってしまった。ある大きなプロジェクトと絡んでいたことから急に大きな注目を集めるようになって、あっという間に大勢の研究者がこの分野に押し寄せてきた。莫大な予算のプロジェクトが世界中にバンバンたって、高額の機器を使った夢みたいな大規模実験がされて、論文がIFの高い雑誌にたくさん出ている。すでに高齢ポスドクと呼ばれる歳になっていた私も、この流れである研究機関に職を得た。だけど、流れに乗ってしまったことを凄く後悔している。私は欧米グループの研究の粗さや足りない穴は理解できるが、彼らの大規模な研究の中ではそんなものは些細な問題になってしまう。私が考えることなど、その数十倍のデータで潰される。そして彼らの研究の流れが速すぎてついていけない。こんなだから私を拾ってくれた人たちの期待に応えられない。その後ろめたさがあるから、毎日いいようにこき使われる。ますます研究ができなくなる。学会でもまともに相手にされない。自分の無能ぶりに絶望して、何もする気が起きない。
少ない予算をやりくりしながら、古い機材を借りてひっそりやっていたころは楽しかったな。誰もやっていないことをやっているワクワクとか、自信とか誇りとかそういうものがあった。
もう戻れないんだろな。いっそ全部、辞めちゃおうかな。
追いかけているアイドルがマイナーだったころはファンコミュで大きな顔ができてたのに、みたいな話。
確かにその通りだね。深刻ぶるのがバカバカしくなってスッキリした。 ありがとう。
アドバンテージを生かせなかった事を後悔してるわけじゃないから 本当に自分の応援していたインディーズがメジャーになってガッカリしてるのと同じだな。 別にこき使われてもいいや...
テッジ特捜班だけど、アドバンテッジね。
昔コンソールゲームの開発やってたけど増田の心境なんとなくわかるわ。 力こそパワーでやられると今までちまちまリソースやりくりしてた苦労って何だったんだって思っちゃう。
高額の機器を使った夢みたいな大規模実験がされて、論文がIFの高い雑誌にたくさん出ている これは残念だけど、持たざるものは指咥えてみてるしかない。 この流れである研究機関...