ふと、もうほぼ使っていない携帯のキャリアメールを見たら、20年来の悪友から長いメールが届いていた。
ひさしぶりだな。
実は今、俺は手術を受けるために入院している。
俺の肺には爆弾が3つ埋まっていて、
それを取り出すしか生きる道は無いそうだ。
手術は難しくて失敗するかもしれないが、
ここで賭けに出ないなら、俺の理性は俺を軽蔑するだろう。
しかし、いよいよ手術となった今、
麻酔によって眠りに落ち、そのまま目覚めないのではないかという、
息が止まるほど迫り来るリアルの前に、
俺は俺のこれまでの生き方を、ただただ悔いている。
それが安定を生むとばかり思っていた。
間違っていた。
それがたまらなく恐ろしい。
今になってお前にメールを書いている。
俺はお前を信じることも、報いることも、頼ることもしなかった。
見くびっていた。
悪かったと思っている。
こんな自分にも、いつか心から信じられる友ができると思っていた。
もっと素直に生きるべきだった。
こいつと俺は、昔なじみの腐れ縁で、顔を合わせれば喧嘩ばかりしていた。
意見が合うことはなかったし、お互いに張り合っていた。
どうせ喧嘩しかしないのだから、最近はすっかり疎遠になっていた。
俺の夢は、いつかこいつを完全に打ち負かして、「完敗だ」と言わしめることだった。
ということは、確かにこいつは死んだのだ。
俺達は傍から見たら葬式にも呼ばれないような関係だったということだ。
きっとこいつは、手術前に俺が病室に飛び込んで来るようなことを期待していたわけではないのだろう。
むしろ、顔を合わせたくないと思っていたに違いない。
よっぽど何も言わずにいようかと悩んだろうに、
それでも誰かに、何か言わないではいられなかった。
それが俺だった。
見栄っぱりに、気取った文章を送りつけてきやがって。
俺が言いたい事は2つ、
俺はこいつを、いつも死ねばいいと憎んでいたのに、
いざ死なれてしまうと、
涙が溢れて止まらないということ、
もっと素直に生きるべきだということ、
それだけだ。