2024-10-11

平日の昼下がり。

長年の激務から開放された女性が、近所の公園で一人、のんびりとしていた。

夕暮れにさしかかった頃、砂場で遊ぶ一人の少年をみつけた。

小学校低学年くらいの少年は、小さい体に似合わない大きな黒ぶちの眼鏡をかけ、一人黙々と砂山を作っている。

「おばちゃんもお手伝いしていいかな?」

少年はパッと顔をあげ、か細い声で「うん…いいよ」と答えた。

女性少年の隣に座り、砂山に砂をかけていく。

「一人で遊んでるの?お友達とは遊ばないのかな?」

砂山にまっすぐ視線を向けたまま、少年は答える。

「僕…今日友達喧嘩しちゃったんだ…あいつすっごい凶暴な奴でさ、気にいらないとすぐ僕の事殴るんだよ」

女性は目を細めながら少年を見つめる。あぁ、君みたいな子を私はずっと知っているよ…と。

「僕ちゃんドラえもんアニメ知ってる?」

「知ってるよ。僕タケコプターが欲しいな。あれがあれば毎日遅刻なんかしないのに!」

「おばちゃんね、ドラえもんの物真似ができるんだよ。」

「本当に?やってみせてよ!」

少年は初めて小さな笑顔を見せてくれた。

「……ノビ太くん、ジャイアンなんかに負けるな!僕がついてるよ…!」

ふと見ると、少年の顔がうっすら雲っている。「おばちゃん…」

ドラえもんの声は、そんな変なガラガラ声じゃないよ。全然にてないじゃないかうそつき!」

砂山をぐしゃりと潰し、走り去っていく少年女性は何もいえなかった。

あたりは暗くなり始めていた。

「………僕、ドラえもん……」

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