カーテンを元気よく貫通する日差しにあてられてお出かけしたら鬱病になりそうなほど春の匂いがした。
勢いよくぶえっくしょいと出してしまえば結構気持ち良いのだけど、その寸前のムズムズする生殺し状態はあまり気分の良いものではない。そんなくしゃみの出る0.7〜0.2歩手前みたいな状態が常に続いている。
「くしゃみが出そうな顔」をキープしていないと引っ込んでしまうのは何を思って設定されたシステムなんだろうか。ズルリと鼻をすすったり顔をくしゃりとしかめればすぐさま引っ込んでしまう。繊細だ。
逆に波を待ち構えてフワッと緩めてみるけれど、身構えすぎても引っ込む。無意識を意識的にやらないといけない。趣味事の達人の領域みたいな話だ。今日は一日中目を細めて顎を上げ微かに歯を見せる、余裕気取って人を小馬鹿にしたような顔をしていた。
くしゃみが出そうで出ない時に延々と湧き出る鼻水を喉に引き戻し続けるのも不快なんで、昼時に入った飯屋のティッシュで豪快にかんでスッキリする。
空のくしゃみではなく鼻水が吹き飛ぶタイプのやつが来そうな気配があったけど、いざティッシュを手に取ると途端に引っ込んでしまう。万全を期した状態に及んで引き返すとはどこまでも逆張りが過ぎる、人体。
でも用を足すついでに、ふと巻き取ったトイレットペーパーで自然にくしゃみを抑えていた。ケツを拭くものであって鼻をかむものだと認識していないようで、くしゃみキャンセルの効果は表れないみたいだ。人体ハックを一つ得た。