ネットの普及で、『世間』の範囲が広くなっている感覚がある。沖縄の人がネットや報道を通じて北海道の『世間』を垣間見ることもできるし、逆もまたしかり。なんなら日本にいながらアメリカやイギリスの『世間』の情報を得ることだってできる。
しかし、『世間』に出てくる登場人物が増えすぎて、身動きが取れなくなって苦しむ人が増えてしまった。ネットという広い『世間』で「○○を頑張った、○○の努力をした」と言えば、「世の中にはもっと凄い人がいる」と膨大な成功者のデータで叩きつけられ、「○○で辛い、○○があって苦しい」と言えば、「世の中にはもっと苦しんでいる人がいる」と捨て置かれる。
ネットの海は広い。けれど広すぎて手に負えない。今や大海は全世界まで広がっている。そのせいで、あまりにちっぽけな自分に絶望して精神を病む人もいる。そうなるくらいなら、井の中の蛙に徹するほうが余程幸せじゃないか?ちょっとしたコミュニティで、ちょっとした成功をおさめて、ちょっとした幸せを味わう。そっちのほうが、余程充実しているのではないか?
ネットが悪いとは言わない。広くなった『世間』が悪いとは言わない。ただ、安心できる井戸の一つや二つは持っておいたほうがいいと自分は思う。