2023-02-06

ポップコーンの思い出

随分前に別れた恋人新宿でばったりと会ったことがある。お互いに暇を持て余して何をと決めるわけでもない買い物にきていた。そんなことを少し立ち話してから、近くの映画館何だかよく分からない邦画を見た。そのまま別れるには寂しかったけれど、何を話していいかからなかったか映画はぴったりだった。上映までの間トイレに行ったりしているうちに僕たちはすれ違ってお互いにポップコーンを買ってしまっていたから、上映中僕たちは二人分の特大キャラメルポップコーンを食べていた。こういうところが僕たちが付き合って、そして別れた原因だったんだろうなと思った。お互いのことを良く分かっているけれどどうしても嚙み合わなかった。お腹いっぱいのポップコーンを食べている間、僕たちは手を繋ぐこともお互いの顔を見合わせることもなかった。

映画館を出た後、食事をしようかとも思ったけれどお互いにそんな腹具合じゃなかったから、そのままバーに入った。僕は彼女と過ごしていたこからずっと飲んでいたウイスキーを頼んだけれど、彼女は僕の知らないカクテルを頼んでいた。時間が経っているんだと感じた。僕は甘党彼女カクテルを教えることを面倒がって。フレッシュフルーツは何があるか聞いて、そのままオススメバーテンダーに作ってもらうことしか教えなかった。何かカクテルを教えてあげれば良かったと思った。彼女のためではなく、自分のために。

ひとしきり飲んだあと、僕たちはあの頃のようにキスをすることも頭を撫でることもなかったけれど、どちらからともなく抱き合って、二人とも意味も分からず泣いて、そのまま別れた。今誰かと付き合っているのかとか、仕事はどうしているのかとか、そんな話は何もしなかった。ぎこちなく二人で過ごしただけの時間だった。当時はとても後悔した。1か月くらいの間彼女電話するか迷ったし、彼女から電話がこないか携帯電話をずっと気にしていた。でもそれから彼女とは会ったことも連絡を取ったこともない。でもそれで良かったんだと、今になって思う。多分ちょっとお互いのことを知りすぎていたから。

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