2022-06-07

酒を飲む理由

もうあまり思い出せないくらい昔の話だ。多分100年とか200年とか前のことだと思う。そのころ僕はまだ幼くて、恋とか愛のことをとても信じていたし、なんなら運命というもの存在も疑っていなかった。そのくらい昔の話だ。

まりにもありきたりな話だから詳細は省略するけれど、僕には好きな女の子がいて、その女の子セックスして、付き合って、そのうち別れた。

その間に僕は人間を100回殺せるくらいの酒を飲んだ。金はなかったけどプライドだけはあったから、ビーフィータージンを買って、そのまま飲んでいた。彼女の一挙手一投足に一喜一憂し、どんな結果でも結局酒を飲んでいた。嘘だ。僕はいつも彼女の行動に失望して酒を飲んでいた。彼女感情が少しでも自分に向いていないと感じると耐えられなくて、酒に逃げていた。酒を飲めば飲むほど僕の醜い感情肥大するのだけれど、飲まないわけにはいかなかったからとにかく酒を飲みまくった。そんなことをしているうちに振られた。

振られた時はもうこのまま酒におぼれて死ぬんじゃないかと思ったが、一晩飲んだくれて起きてみるともう酒を飲むことはなくなっていた。不思議もので、失くすんじゃないかとビクビクしている時は不安に耐えきれないけれど失くしてみると意外とスッキリするものだった。そうして僕は恋とか愛とか運命というもの感情の作り出す幻だということを知った。

でも、時が経つと今度は酒を飲んだ時だけ恋とか愛とか運命を信じられるようになってきた。朝起きたらすべて幻想だった気づくと自分でも分かっているのに、酔っている時だけはそれを信じている。いや信じたいと思っているから疑うことをしない。理性では分かっている事実を理性が騙す、これが大人になるということなのかなと思った。だから今日も僕は酒を飲むし、明日も酒を飲むんだと思う。

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