ありがちな話だろうけど。
探しものをしてたら見覚えのない小さな箱があって、見覚えのない筆跡の手紙がついていた。
「○さん(夫の名前)との泊まり旅行はとても楽しかった。おそろいのこれを身に着けていれば離れていてもずっと一緒だね」というような内容。ご丁寧に日付と差出人の名前付き。十年前だ。
十年前、自分は何をしていただろう。仕事をしながら義理の両親のお世話、看取り、子どもたちの入退院、いろいろ一段落ついて、本当に久しぶりに日帰りの家族旅行にいった時期と、手紙の日付は、ほんの十数日しか違わなかった。
なんでその時に離婚してくれなかったんだろうな、とぼんやり考えている。結婚して実家から遠く離れたところに長く住み、実の親よりも長く夫や義理の親たちと過ごしてきた。それも全部、いったい何だったんだろうな、という気持ちになっている。
十年前なら離婚して子供連れて縁もゆかりもないところにでも住み直して、また仕事探して頑張れたかもしれないのに。
ひとまず手紙を写真に撮り、こっそりネットの片隅に放流してみた。名前も日付も隠しているし、たぶんちょっとやそっとでは見られない場所。自分が死んでも、あの手紙がネットの海を漂い続けるのは、ちょっとだけ面白いなと思っている。夫は当然、まだ何も知らない。