2019-11-18

逆光

歩いていたら逆光に照らされ思わず顔をしかめたら、

「おい!てめぇ喧嘩売ってんのか」

と怒鳴られた。

日陰に入り視界が元に戻ったので声の方を見ると、お笑い芸人コントで演じるようなチンピラがいた。

「おめぇやんのか?」

これは話が通じないなと思いながら、私は逆光で目が眩んだだけだと説明した。

「はぁ?意味わかんねぇよ!なめてんのか?」

案の定チンピラ理解せずキレてきた。

しょうがないので私は逆光に照らされる地点まで戻った。

「逃げんじゃねぇ!」

照らされた地点で私はチンピラに、

「あっちを見て」

とお願いしたが、

「はぁ?なめてんのか?」

こちらにメンチを切るばかりなので、私がチンピラの後ろに回りこもうとすると、その動きを追従したチンピラが思惑通りの地点に立ち逆光に照らされた。

「うぉ!まぶしい!」

正直ラリってるのだろうと思っていたが、チンピラは急に落ち着い多様な態度になり「すまない」と謝罪してきた。

10分後。私とチンピラ公園お酒を飲んでいた。

私は濃いめのハイボールチンピラほろ酔い

チンピラは顔を真っ赤にしながら私に説明してくれた。

日大切な人が亡くなったと。

それで自暴自棄になりからんしまったと。

それから何本か飲んだ後、チンピラは「ありがとうよ」と立ち上がりふらふらと歩き始め夕暮れの住宅街に消えていった。

その商店街を久しぶりに歩き逆光に照らされた時、私はあの日チンピラのことを思い出した。

視界が元に戻ると、こちらを気まずそうに見ている人がいた。

そう。あのチンピラだった。

チンピラ居酒屋の店先で準備をしていたようで、私を見るなり頭を下げて「お店始めたんです」と静かに笑った。

チンピラ。ではなく店長は濃い目のハイボール秋刀魚刺身サービスしてくれた。

その時の笑顔もまた眩しくて、私は少し目がくらんだような気がした。

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