私は、20代後半になるまで「恋愛」というものをしたことがなかった。まず、女である私の恋愛対象が、同じ女性であると自覚するまでが大変で。好きな女性に、同性の自分を好きになってもらうのはもっと大変で。その大変さを乗り越えて、1年半前にはじめて恋人ができた。
彼女から、沢山のことを学んだ。好きな人と付き合うのは、本当に幸せなことだと。抱きしめ合うとやわらかくてあたたかくてとても気持ちがいいと。特別なことをしなくても、会話が弾まなくても、ただ一緒にいるだけでうれしいと。手をつないでいるだけでどきどきして、どこにでも行ける気持ちになると。
彼女のかおりに包まれながらまどろむのが好きだった。日常の穏やかさの中に、熱い情熱もあった。彼女と初めてセックスした時、脳が焼き切れるような衝動に突き動かされた。彼女のすべてが欲しいと思った。彼女は私のもので、私は彼女のものだった。
それがなくなった今、とてつもない喪失感に苦しんでいる。今まで幸せにあふれていたのが、みんななくなってしまった。そりゃあ、別れるまでにいろんな軋轢や、憎しみや、つらさがあったよ。でも、別れるとそういうことは全部忘れて、「幸せだった思い出」だけがこの身にまとわりついてくる。それが本当に苦しい。
彼女のにおいが、やわらかさが、声が、かけてくれたことばが、注いでくれた愛情が。一緒に行った場所が、一緒に食べたものが、一緒に見たものが。その思い出の数々が、脳裏に浮かんでは消えて、息ができなくなる。
苦しい。しんどい。
どうしたら、その幸福への未練を捨てられるのだろうか。
身の回りから元恋人を思い出すような物を処分するといいよ。 時間が経つのを待つしかないと思う。
今日も女はレズ長文