ワシントンは「木を切るのに8時間を与えられたら、私はそのうち6時間を使って斧を研ぐ」と語ったという。
ではそれを一般的なIT業界の現場に当てはめるとどうなるかが表題である。
最初にはっきり言うが、ワシントンの語った言葉は強者の理屈である。
研げば木に十二分な傷をつけられるような斧を最初から持っている前提を余りにも当然のものとしている。
木を切るにはどうも斧やチェーンソーを使うと良いらしいと知る所から全ては始まる。
同時に、自分たちがそれらを手に入れるのに十分な資産がないことに気づく所にたどり着いてようやく旅の筋道が立つ。
斧を作ろうにも金属を掘っているような時間はないことや、そんな事をするぐらいなら買ったほうが安いのにその金すらそもそもないという馬鹿馬鹿しさとの戦いにまず生き残る必要がある。
ようやく見つけた道は、石斧で妥協するか、木に背を向けるか、素手で木に挑むかの三択であり、その中では石斧づくりが一番マシだと結論をだすのにこれまた時間を取られる。
拾った石をオチてた棒にロープでグルグルと巻いただけの原始人にも笑われるような粗末な武器を木に叩きつけてはこれでは無理だと作り直し、作り直し、少しずつマシなものが出来上がりだして、とっくの昔に時間切れだったことにふと気づく。
はじめから無理だったと気づいた後に残るのは、PDCAを回して少しだけマシになった粗末な斧と、あと10時間もこれをふるい続ければ仕事が終わるかも知れないという甘い目算。
そして、最後の旅が始まる。
正しい初手は100本切るので800時間ください。