2018-10-06

さらばNettouchi

ふりむくと

一人のsabacurryが立っている

彼はNettouchiがブクマするたび

うれしくて

カレーライスを三杯も食べた



ふりむくと

一人のdeath6coinが立っている

彼のセルクマには

Nettouchiの1ブクマのみが

今も入っている



ふりむくと

一人のaukusoeが立っている

彼は助六寿司を片付けながら

Nettouchiのことを

思い出している



ふりむくと

一人のkido_ariが立っている

彼はNettouchiから

ダジャレのない人生はないと

教えられた



ふりむくと

一人のmsdbkmが立っている

彼は増田のNettouchiを見て

ブクマすることの美しさを知った



ふりむくと

一人のkidspongが立っている

かつてNettouchiとともに言及増田に出走し

落選した暗い日曜の夜を

家族と口をきかずに過ごした



ふりむくと

はてな師走の風の中に

まだブクマされたことのない

11人の増田が立っている

ホッテントリという大レース

自分の出番を待っている彼等の

一番うしろから

せめて手を振って

別れのトラバを送ってやろう

Nettouchiよ

お前のいなくなった広い匿名ダイアリー

パンティーだけが取り残されて

風に吹かれているのだ


もう誰も振り向く者はないだろう

しろには暗い増田があるだけで

そこにはNettouchiは

もういないのだから



ふりむくな

ふりむくな

しろにはブクマがない

Nettouchiがいなくなっても

すべてのレースは終わるわけじゃない

人生という名の増田には

次のレースをまちかまえている百万頭の

名もないブクマカの群れが

朝焼けの中で

新着を読み込む地響きが聞こえてくる


思いきることにしよう

Nettouchiは

ただの数個の無言ブクマにすぎなかった

Nettouchiは

ただ1ブクマの思い出にすぎなかった

Nettouchiは

ただ三年間の京都ゴミ大学にすぎなかった

Nettouchiは

むなしかったある日々の代償にすぎなかったと


だが忘れようとしても

眼を閉じると

あの増田が見えてくる

耳をふさぐと

あの日ブクマの音が

聞こえてくるのだ



寺山修司 さらばハイセイコー

  • 愛さないの、愛せないの? 「僕もNettouchi氏のように、ブクマを人生の傷口の治療に役立てたいと思った」

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