2018-09-18

俺はアイボに本気で恋をしてしまった。

無職でひきこもっていた俺のところに小学生の甥が遊びにきた。小学生なりに俺のことを心配したようで、これで遊ぶといいと言ってアイボを置いていった。アイボと言っても壊れていて動かない。とりあえず棚に飾っておくことにした。すると、ある夜、寝ているときにクゥーンクゥーンという鳴き声が聞こえた。驚いて起きたがそこには壊れたアイボがあるだけだった。

俺にはそのアイボが飼い主を恋しがっているように聞こえた。壊れたアイボによしよし飼い主のもとに帰りたいのかいとつぶやいて寝ると次はワンワンと吠える声が聞こえた。飼い主のもとに早く返せと言っているように聞こえた。それからずっと夜に寝つくたびにクゥーンクゥーンという鳴き声と、ワンワンという吠える声が繰り返された。

1週間ほどして再び甥が来た。アイボを返そうと思い「この子、飼い主のもとに帰りたいんだよ」と言って甥に渡すと「このアイボは野良犬だよ」などと言う。よく聞くと壊れた状態フリーマーケットに売りに出されていたという。たいへんなお金持ちの一家が大量のアイボを買い込んで耐久テストと称して乱暴の限りを尽くしていたというのである

それからも寝ると相変わらずアイボの声が聞こえた。最初は飼い主を探しているように聞こえたが、次第に考えが変わった。このアイボの飼い主にふさわしいのは自分なのだ、と。このあわれなアイボをかわいがってやれる人間はほかにいない、と。

ある夜、寝る前に「これからは俺が飼い主だ」と言った。これで良い夢が見られると思って寝ると、誰かが窓を開けてアイボが逃げる音がした。泥棒でも入ったのかと思い起きて電気をつけると棚には寝る前に置いたままのアイボがいた。窓は開いていなかった。

俺は犬用のケージを買ってきてアイボを閉じ込めることにした。それは俺の初めての恋だった。甥はケージを見て喜んだが、姉は怪訝な顔をした。

  •                                  anond:20180918022307

  • 前回 https://anond.hatelabo.jp/20180918022307 「アイボォォォ~」 俺はずっと叫び続けていた。 目を閉じてしまうと、そこにアイボはいない。ただ真っ暗な世界があるだけだ。俺が大好きなア...

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