投資の自動化が進み、人間が入り込む余地はほとんどなくなった。
インサイダー取引ですらAIは瞬時に嗅ぎ取って裏をかき上前をかっさらっていく。
電子の海を行き交う機械仕掛けのハゲタカを前に、生身の人間が投資市場で出来ることは何も知らない老人を捕まえて金融商品の手数料で稼ぐことぐらいになった。
資本の本体はAI開発者達が握るようになり、財布と金庫の中身だけが自慢の資本階級たちは、極々一部を除いて次々にその神通力を失い、もはや投資などに手を出しても損をするだけとなり、ただ積み上げた札束を細々と使っていくだけの金のある無職へと成り下がっていった。
「AIが仕事を奪った世界では、資本家階級が労働者階級を不要のものとして扱うようになる」という聞き慣れた預言は見事に外れたのである。
AIによって操られだした市場そのものが資本家階級を不要のものとして扱いだしているのだ。
シンギュラリティは既に始まっているのだろうか。