電車に乗った。ちょうど空席がなくて、その駅で乗り込んだひとがみんな立つくらいの混み具合。
車両のなかほどにむかっていたら、少し向こうで大学生くらいの青年が立ち上がった。まだ扉が閉まってなかったので、降り忘れて焦ったのかとおもったら、そういうことでもなく、扉付近で立ち止まってる。
電話がかかってきたわけでもなさそうだし、なにを急に立ち上がったのかわからないけどラッキーだから座っておこうとおもって空席にむかってたら、青年が立ち上がったほうの扉からさっき乗りこんできたとおぼしき小さなおばあさんが、つかみ棒にすがってちょうど立ち止まろうとしていた。
なるほどね。席を譲りたかったのか。
でも、残念なことにおばあさんは座席が空いたことにきづいてない。それどころか危うく自分が座ってしまうところだった。あぶないあぶない。後ろからおばあさんの肩をつつき、空いてる座席のほうにうながす手振りをすると、いえいえという手振りを返されるので、いえいえどうぞどうぞという手振りを強めに繰り返すと、どうもどうもすみませんというように頭をさげておばあさんは席に着いた。
ほんとうに席を譲りたかったのか、なにかほかの理由による偶然なのかはわからないけど、青年のまじめそうなかんじやタイミングから想像するに、老人が乗ってこられたから席を譲らないといけない、でも声をかけて断られるとすごい困ってしまう、とりあえず立ち上がって「空席チャンス」を作っておこう、というようなことだったのかな。
むかしはぼくもそんなふうに考えていたことあったし、実際に断られてどうしていいのかわからなくなったことにあったこともあったけど、あるとき席を譲って断られてた女性が「いえいえ、どうぞどうぞ」とさらにカブせてるのを見てて、なるほど席を譲るプロトコルは3ウェイ・ハンドシェイクなんだなとわかってから、ほとんど困らなくなった。
だいたいがいったんは断るのだ。諸葛孔明なんかは3回も断った(断ったのは2回なんだっけ?)。でも「どうぞ」「いえいえ」「どうぞどうぞ」となるとだいたい座ってくれる。それだけのことだった。面倒だとか黙って座れとか言うものでもない。人間のコミュニケーションというのはそういうものなんじゃないかな。儀礼があるなら従えばよい。誠意があるなら、だまっていては伝わらない。声に出して「どうぞどうぞ」と言ってみるとけっこう楽だったりする。
handshakeって握手のことだけど。。。
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