大学院の先輩の話
その研究室の教授は言うことがコロコロ変わったり、意味不明なアイディアや意見をバンバン言うタイプだった
お陰でその研究室のメンバーは徐々に、教授が何か言った瞬間に「またなんか言ってるよ」「前と言ってることが違うじゃないか」と信じなくなっていった
だが先輩はそうではなかった
喩え話だが、先輩は、その教授が「これはハンバーガーだよ」と言って石を差し出してきても
「ひょっとしたらハンバーガーかもしれない」と考え石を噛み、咀嚼した上で「これはハンバーガーではないですね」と突き返すような人間だった
その際に教授は「当たり前だろう」なんて言うので、先輩も毎日ブチ切れていたのだが
「こんなのハンバーガーじゃない!」と石を咀嚼せずに突き返すことはしないのだった
そのおかげで、先輩の論文は深いものに仕上がっていたし、他の人が気づかないことにも気づいていた
もちろんそのお陰でスピードは落ちるのだが、研究者ならそのくらい熟考できなくてはいけないのかもしれないと私は思った
私は先輩のようにはなれないが
「情報の咀嚼の長さ」というものを柔軟に変更できる人間になりたいと感じた
何でもかんでも自分の過去の常識を信じ込み、「そんなもの間違っている」と断じてしまうといずれ前進できなくなる
相手が信用できないからとか、誰が言ったからとか、常識的ではないとか、そういうのを少し脇に置いといて
「ひょっとしたら真実を言っているかもしれない」と少しだけ考える癖をつける
まあ大抵は「石じゃねーか!!」となるのだが、たまーに、ひょっとしたらハンバーガーな時もあるのではないだろうか