俺は上司の親と面識がない。
後輩のおばさんから「通夜にいくよー」とメールが夜中の0時過ぎに来た。
(勝手に行っとけ)
別の後輩の女から「夜中にすみません。○○さんへ連絡してください」というメールが夜中の1時前に来た。
俺は行きたくない。
周囲はさも行くことが当然のようにふるまっている。
俺は上司の親の顔も知らない、話したこともない。
俺はわからない。
俺は故人の親族(友人)に同情するふりをして、
その実、喪服を着て、厳かな気分に満ちている自分に酔っていた。
その後、いかに自分が悲しんだかを通夜に参加した友だちと飯屋で共有して、
酒を飲みながら、格好いいうわべだけのセリフを交わしながら、カッコウつけてたんだ。
もう俺、そういうの嫌なんだ。
脅しばい、これ。
内羽ストレートチップシューズをピカピカに磨いて、正当な白のシャツに黒のネクタイでディンプル作って、黒のチーフ挿しけばいいのかね。
決めすぎたら、ついてくるのもやだし。
きっと、俺は無難にまとめるんだろうな。
で、俺は悲しんでいるふりをしながら、職場の同僚とあれこれ話して、また自分たちに酔うんだろう。
嫌だ。
全く面識がない故人に対する礼儀として、俺は集団オナニーには参加しない。
しゃべらない。
「緊急でもないのに、迷惑だから夜中にメールするな」と罵りたい。
むかつくので、朝4時にメールを返すことにした。
いい気味だ。そのまま路頭に迷って死んでくれ。