そして、お互い様というのは、受けた恩を返すことによって成立する。
家族に恩を受けたのだから、家族に恩を返すべきというのは、よほどこじれた家庭でなければ成り立つ。
また、社会やその構成員から恩恵を受けてきたのだから、お前も社会に恩を返していけ、
というのに対しても、ほぼ異論はないと思う。
しかし、前者が求めるのが対象の限定された深い愛情なのに対し、後者が求めるのは広く薄い献身であり、
両者は本質的に異なる。
さて、結婚というのは、人が出会い、新しい家庭を作ることであるという。
しかし、成人してから出会う多くの場合、お互いに受けた恩もなければ、返すべき恩もない。
例えば幼なじみだったり、同棲期間があったりすればまた別だろうが、そういうケースばかりでもないだろう。
特に、最近は婚活とか言われるように、男女ともに条件面である程度完成した相手を求める風潮がある。
正直、怖くないのかな、と思う。
そりゃ、昔はお見合いも盛んだったらしいが、そういう場合、当人同士の繋がりの薄さは、
家同士の付き合いでカバーされていたはずだ。
今お見合いをやったら、愛情のなさはそのままに、おそらく当人だけでどうにかしないといけない。
これまで支え合ってきたわけでもないのに、なぜこれからは支え合えると思うのか。
後の世代に恩を返すというのなら、子なしの家庭は恩知らずということなのか。
これらの問いについて、答えが出ずにいる。