具体的には、二番後半の歌詞「お嫁にいらした ねえさまに よく似た官女の 白い顔」という部分だ
まず気になるのが、「ねえさま」とは歌っている本人「私」から見てどのような関係の者かという点
実の姉ならばお嫁に行って既に家にはいないことになるが、雛祭りのようなお祝いの日に既に居ない人物を持ち出すのは些か不自然ではなかろうか
「お嫁にいらした」という言い回しも、家から出て行ったよりは他所から家にやってきたことを暗示している
これらの事から、この「ねえさま」は「私」から見ると兄弟の妻、すなわち義姉と考えて差し支えなかろう
次に気になるのは、この「ねえさま」が官女に例えられている点だ
「白い顔」とは白塗りの化粧を指すのであろうから、これはやはり嫁入り時の花嫁姿の事を言っていると思われる
だが花嫁を雛人形に例えるならば、普通は内裏雛の女雛に例えるのではないだろうか
人生で最も輝く瞬間を、いくらある程度は位が高いとはいえ側仕えの女性に例えるというのは、悪意と取られても仕方がない
以上を考え合わせると、歌い手の「私」は普段から「外から来た嫁は身分の低い者」という、大人たちからの刷り込みを受けていることが疑われる
最も高い女雛の地位は「ねえさま」でなく、「私」のものである、と無意識に信じているのだろう
段飾りの雛人形を準備できるのはそれなりに裕福な家なので、この歌の「私」も由緒ある血筋に連なる少女なのかもしれない
その地域では大きな力を持つ家に外から嫁ぎ、家族全員、少女たる義妹からさえも低く見られて下女扱いされる嫁…
「うれしいひなまつり」の歌詞は、そんな人間関係の薄暗い部分を、知らず知らずのうちに抉り出しているのかもしれない