おい君、君はどんくらい腋毛が生えているか、としきりに尋ねてくる。
尋ねてくる分には可愛げがあるが、なあ少し腋をあげて見せてくれ、としきりに強請ってくる。
もう寝ようと提案するが、駄目だ見るまでは寝ないと駄々をこねる。これには閉口した。
じゃあ無理にでも見てやろうと、がっぷり四つに組み敷いてくる。
この陰毛男は、ひょろっとした体つきのくせして存外握力が強く、嫌がる僕の腕を
強引に持ち上げ、腋をじろじろ凝視してくる。
ふうん、なかなか毛深いね、とばかにしたように云うから、かっとして、
じゃあ君のも見せてみろと云ったら、やっこさん、喜んで万歳の姿勢をとる。
思わず、なんだ腋の下までチン毛が生えてるじゃないかと口にしてしまい、
えらく不興を買った。
その件はそれで収まったのだが、その晩、陰毛と枕を並べて寝ようとするも、どうにも眠れない。
静かにしろと怒鳴りつけてやりたくとも、相手は夢心地なんだから仕方ない。
そんなら先の仕返しをしてやろうと、細かく裂いてぬらしたティッシュを相手の鼻に詰めこんだ。
するとなんの拍子か、やっこさん、ずぞぞと下品な音を立ててぬれティッシュを吸い込んでしまった。
このままでは窒息するかもしれん、と大わらわでティッシュを除くが、
破れた欠片が鼻の奥に吸い込まれ、もはや手の施しようがない。
まさか鼻をほじくる訳にもいかず、翌朝変死体で発見されたらどうしようかと気を揉んだが、
だんだん考えるのが億劫になり、ええい、どうとでもなれと自分のベッドに戻って不貞寝した。