2014-02-04

CARNIVAL

胸が詰まる

死にたい、殺したい、死にたい、殺したい、死にたい、殺したい

掌には重さ100kgの石、凹凸激しく凶器となり得る

目の前には顔の分からないどこかの誰か

つの間に運び込まれたのだろうか

両手足は縛られ口には猿轡、顔はすべて麻袋に押し込まれ、身動き一つしない

「助けなきゃ」

―うるせえ、死ね

「そんな事をして意味がない、だれも得しない」

―じゃあ、代わりにてめえが死ぬ

「きっと殴ったら後悔する、殴った時の感触を何度も思い出すことになる」

―ここで殴らなきゃ、俺が俺でなくなっちまう


僕はその時、どうして暴力的になれるのか分からなかった

人を害しても、何も解決しないのに

それぞれがなんとか我慢して社会は成り立ってると思うから

そこから考えて、彼のやり方はどうしようもなく幼稚であるように思えた

でも、僕には彼の言うことも少しわかる気がした

殴られたら殴ってやりたい、罵倒されたら罵倒し返してやりたい

そう思ってしまうのは、もう、理屈なんかじゃなくて

世の中は僕の知らないルールが沢山あって

それらが複雑に組み合わされて出来てるんだなあ、って最近は思うようになった

から、彼がそう思うこと自体も、そのルールの一つで

でも、だからこそ、それをもっと

誰もが悲しまない方法でやり遂げられるんじゃないのかなあと思わけで

そういう時、決まって彼は

「お前のやり方は、どう考えても間違っている、自分を騙す理由が欲しいだけだろ?」

と指摘する

僕は、彼のその言葉だけには賛同できなかった

僕が本気で抵抗すると、彼も不承不承といった感じで僕の意見を受けれてくれる

彼はすぐに暴力に走る直情的な所があるが、それでも僕が本当に嫌だと思ったことはしなかった

それは。僕が彼とやっていける、大きな理由になっていた

そして何より、僕は彼と話したりするのがそれほど嫌ではなかったのだ

また今日も、顔の見えない人間が僕たちの前に運び込まれる

「やっぱり助けなきゃ。誰だって、こんなことは嫌な筈なんだ」

―またお前の甘っちょろい性善説

「攻撃したってしょうがないじゃないか。この人が何をしたのさ」

―お前も……いや、何でもねえ

「……?」

―とにかく、こいつを殴るのに理由なんか要らねえよ。殴らねえと殴られる。殴ったら気分が良い。それだけだ

「それは飛躍しすぎだよ。この人が僕たちをいきなり殴るわけでもないし、もし殴ったとしてもそれには何か事情があるんだよ」

―またお得意の"事情"が始まったよ。いいか、事情なんて関係ない。肝心なのは自分を守れるかどうかなんだ

「だから、守る必要なんてないじゃないか。仲良くする方法だって

―ないな。そんな甘い事してると、相手をつけあがらせるだけだ

「どうしてそう思うのかなあ。ちゃんと話し合えば、仲良くできるかもしれないのに」

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん