もともとは妹が拾ってきた猫だった。うちにはタマ(猫)がいたので、えさをあげて、空き地に置いてきた。もう3歳くらいで、飼われていた形跡があった。
うちにはタマがいたので、今度は車で15分くらいのところに置いてきた。数時間後、クロは家の玄関にまたカムバックした。
クロは甘えん坊なのにキレる猫だった。急に意味の分からないところでキレて、母親が激しく引っかかれ、後ろ足でけりまくり、全治1週間なんてこともあった。頭もタマに比べると悪く、ドアは自分で開けられなかった。クロはこの性格のせいで捨てられたのだろう、と家族は思った。
クロはバカだが力が強く、暴れるのでたまに鉄アレイを首輪につけられた。全盛期の頃の彼は、3キロの鉄アレイを引っ張りながら歩いていることもあった。タマを突発的に攻撃することがあったからだ。人間でいえば完全にDQNだった。
そんな彼もここ3年くらいは老猫で、体調も思わしくなく、逃亡も暴力もなくなった。太くて短い、真っ黒に黒光りした姿はもうなく、3/2くらいに痩せていた。
クロは体調が悪く、病院に行っていて、最後はちょっと苦しそうだったらしい。まあでも、クロはあんなにめちゃくちゃな性格で、でも猫だから可愛がられて、うちのマンションの壁と床を汚しまくり、好きにして、幸せだったよね、と母親と話した。
クロは動物霊園に行った。人間の葬式とあまり変わらなかったよ、と母は言った。なら、タマやチビ(猫)も参加しないといけなかったねぇ。
捨てられても捨てられても戻ってきて、うちで飼われて、バカな猫だったけど、かわいかった。
今旅行中の妹はクロが死んだのを知らされていない。週末帰ってきたら、クロを飼うと一番ごねてた妹は一番泣くと思う。もともと携帯小説でも泣くようなタイプだし。クロはみんなに可愛がられて、やりたい放題して、妹もこれからたぶんめちゃくちゃ泣くし、クロはやっぱり幸せだったな。人間よりも、幸せだったかも。