「悲しいの?」
僕は女の子に聞きました。
女の子の手の中には小さなインコが横たわっていました。ジッと目を閉じて固くぴくりともしません。
「その悲しみ、無かったことにしてあげるよ」
僕はそのインコの死骸に触れるのが少し恐ろしかったけど、勇気を出して指先で触れてから、心の中のリセットボタンを押しました。
「もう悲しくない?」
「うん。なんで悲しかったのか忘れちゃった。」
女の子は母親の元に走って行きました。女の子と母親は仲良く手をつないで去っていきました。
喫茶店で、オジサンが険しい表情でじっとコーヒーだけを見つめていました。
「悲しいのですか?」
僕はオジサンに聞きました。
「キミには関係無いだろう。」
オジサンは僕の目も見ず、そう応えました。
すると、オジサンの目の前におかれた飲み物がコーヒーでは無くチョコレートパフェになっていました。
オジサンは、ほとんど顔には出しませんでしたが、内心ウキウキしているのでしょう。
帰り道、交差点のビルがひとつ無くなって空き地になっていました。
テレビを見ていたら、外国でテロ事件があったことを知りました。
痛ましい事件現場の状況をテレビを通じて目の当たりにしました。
僕は居ても立ってもいられず、心の中のリセットボタンを押しました。
すると、見ていたテレビ番組が地元のラーメン特集に変わりました。
僕はテロ事件は無かったことになったのだなと思い嬉しくなりました。
「みんなが幸せになればいい。」