2011-03-10

〆の一時

飲み疲れた体でたばこ屋の脇の路地へ入ると、雨に濡れた地面が自販機の明かりを反射させている。

昼には薄暗かったはずのこの路地が、深夜になるとここまで明るく見えるのだから不思議だ。

少し前方へ目をやると、赤提灯が風に揺れている。無造作に並べられた待合席には誰もいない。

店の前に立って中の様子を窺おうとするが、結露がひどくて腰より上の高さは見えない。まあいい。

少し勢いをつけてドアを開けると、頭にタオルを巻いた若者が「いらっしゃい」と迎えてくれた。

右手には水商売風の女性会社員らしき中年男性。平日だというのに随分と楽しげだ。

テレビの見える席に座ってラーメンを頼む。威勢の良い返事。コップに注がれた水が出てきた後、調理が始まる。

ラーメンの調理風景に興味はないので、私はテレビを楽しむことにする。

テレビではネココタツに入るかどうか、どうでもいいことを実験している。深夜番組しい雰囲気だ。

結局コタツに入ったネコはたったの一匹だった。本当にどうでもいい。

テレビ実験が終わると共に、ラーメンが出てくる。そういえばここのラーメンは久しぶりだ。

少し黄色がかったとろみのあるスープに、細めの麺。チャーシューメンマネギ

テーブルに置いてある高菜を少し入れて、スープを飲む。どこにでもありそうでここにしかない味。うまい

少し堅めの細麺はスープとよくマッチしている。ずるずると下品にすすると、体の芯が温まってくる。

〆のラーメンというのはこういうのでいい。高い完成度も奇抜さも必要ないのだ。

完食まで五分と少し。コップの水を飲み干した後、ご馳走様と告げて代金を支払う。

さて、通りまで出てタクシーを拾おう。

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