僕はMacユーザだ。最初に買ったのはスケルトンのiMac。FirewireとDVD-ROMがついているやつで、色はグリーンだった。OSはMacOS9.0.2。もう10年近く前の話だ。
僕がMacを買ったのは、ひとえに絵が描きたいからだった。正直Windowsにするかどうか、とても悩んだ。でもその頃買った色彩王国という色の塗り方をプロにインタビューした本では、CG塗りをしている人はMacを使っていた。だから僕もMacを買った。その頃は絵のプロになる気満々だったから、A3までプリントでき、カートリッジを交換すれば同じくA3までスキャンできるプリンターと、とても高かったけどPhotoshop 5.5J、そしてタブレットも一緒に買った。さすがにタブレットまではお金が回らなくて、Favoの一番安い奴になっちゃったけど。本を読んでPhotoshopでの絵の塗り方を勉強した。自分なりにいろいろいじって、デジタルトーンのかけ方を覚えたりもした。それで僕は満足していた。その頃に描いた絵は今もちゃんととってあってpixivにアップしてあったりする。
でもMacに不満がないわけでもなかった。興味本位でプログラミングをやってみたいと思っていたけど、ネット環境もなく大型書店もない田舎住まいの僕にはMacでのプログラミング方法なんて分かんなかった。それに、爆弾がよく出たりとか、どこにファイルを置いたのかすぐ忘れてしまったりとか、そういうところでも不満があった。
そして、絵のプロを目指すとか思っていたのに、いろいろ思う所あって実家を離れ大学に進学した。学科はプログラミングが出来そうな情報系を選んだ。そして大学で、コンピュータ室の管理のアルバイトをすることになった。
そのアルバイトでは、大学で使っているUNIXシステムのユーザサポートと、その他の雑用をやった。雑用用にはWindowsXPだったか2000だったかのマシンを使わせてもらえることになった。そして驚いた。WindowsはMacよりも使いやすかったことに。
ユーザのホームがあってその下にマイドキュメントがあって、とどこにファイルを保存すればいいのか簡単に分かったし、それゆえ作ったファイルが行方不明になってしまうこともなかった。安定性も高かった。
ただ、プログラミングに関しては大学の授業とバイトの兼ね合いで、WindowsではなくUNIXを使ってやることになった。最初に覚えたのはCだ。UNIXの世界に触れたのも、僕にとっては非常に大きなカルチャーショックだった。それまでアイコンをクリックして何かが出てきて、といったGUIの世界しか体験したことのない僕にとって、コマンドを打ち込んであれこれやるというCUIの世界は、なんと言ったらいいんだろうか?効率性とかそういうものも当然感じたけれど、でもそれ以上にコンピュータの原点というか、よりコンピュータの弱いところというか、コンピュータに自分が降りていくというか、そんなことを感じた。変なことを書いたがとにかく、コマンドを使ってファイルを作って消して実行して、自分がどこに居るかということは見た目ではなく自分の頭の中で把握していなければならない、自分の他にもコンピュータのユーザが居る、まるでコンピュータの中のマンションに住んでいるような錯覚を覚える文化に、虜になったとまではいわないが非常に感銘を受けた。
さて、次に買うマシンはどうしよう?と思ったとき、僕はWindowsを買おうと思った。UNIXシステムは大学にあるし、Linuxを入れるにしてもまずはPCを買わなければならない。そう、このとき僕の中で2代目のマシンをMacにするという選択肢は綺麗に消えていた。しかし、そんな僕を変える出来事があった。MacOSXとの出会いだ。
バイト先ではどんな環境のユーザから問い合わせがあるか分からないから出来る限りいろんな環境を揃えなくてはならないという理由で、2台だけだったがMacも置いてあった。僕がMacユーザだと知った技官の方は、そのMacの管理を僕に一任した。そのMacに当時ですら古かったMacOSX10.0が入っていたのだ。
この最初のMacOSXは評判が悪かった。すぐ固まる、落ちる、今までのソフトが使えない、そんな悪評を僕はマックの雑誌で沢山目にしてきた。しかし実際にこのMacOSX10.0をみて、それらの評判がそう的外れなものではないということはすぐわかったが、MacOS9に比べると、Windowsのように自分のホームがあって基本的にファイルがそこに置かれるというところは改善点だと思った。だがそれ以上に僕を魅了したものがあった。ターミナルの存在だ。今までのようにGUIを使ってファイルを作ったり移動したりすることができる。しかもそれをUNIXのように(実際UNIXなのだが)CUIの世界から眺めることもできる。その逆もしかり。それにWindowsでは面倒なUNIXへのログインも、sshを使って簡単にできる。そんなことにとても感動した。そしていろいろ調べているうちに当時最新のMacOSX10.2だったらX11betaも使うことができると知って、技官の方や先生へ直談判した。技術的なことにどん欲な彼らはそれに非常に興味を示し、MacOSX10.2を買ってもらえた。僕は早速それらをインストールし、Mac上でUNIXサーバからEmacsの窓を引っ張ってきた。それだけのことであるが、それがたまらなく楽しかった。いつどこの研究室からどんな問い合わせが来るか分からないから、暇なときはMacを使って勉強しなさい、と言ってもらえ、僕はMacに夢中になった。日本語Texを入れたり、Mac上でCやJavaの勉強をしたりと、それはとても楽しい時間だった。そんな僕は次のマシンもMacにするぞ、と固く心に近い、そしてその通りまたMacを買った。友人達がコンピュータ室にこもってプログラミングの課題をこなしているとき、僕は早々に家に帰って自宅のMacからサーバにログインして課題をこなしたものだ。
今この文章も、当然Macで書いている。今はWeb開発系のバイトをしていて、その上でもMacはいい選択肢だと思っている。ペーペーの僕の遥か上を行く開発チーフ達もうちの会社の場合ほとんどMacだ。ApacheをはじめとしてWeb開発に必要なものはほとんどあらかじめインストールされているし、足りないものはMacPortを使ってすぐにインストールできる。ブラウザでの表示確認にはSafari、Firefoxをはじめとしたモダンブラウザが使えるし、Parallels Desktopを使えばWindowsもインストールでき、そのブラウザからMac側で動かしているWebアプリの表示確認をすることだって出来る(たいていはIEに失望することになるが)。
絵を描きたいというところから始まった僕のMac人生だけれど、Web屋もどきになった今でも重宝している。これからもよっぽどのことがない限り変えることはないだろう。非常に長く主観的な思い入ればっかりの文章を書き連ねてきたけど、これが僕がMacユーザを続けてるわけ。
おれもiMacDVを買っていまだ現役(G4換装+メモリ1G+DVD-RAM/RWドライブ換装なら普通に使える)だけど、文章が長すぎて読めなかった。