結論から言うと、これは「福島は安全管理」という結論ありきのニセ科学である。なお、普段から科学科学と唱えている皆様にはおわかりだろうが「福島は安全」の否定は「福島は危険」ではないので注意されたい。
セシウムとストロンチウムはそれぞれアルカリ金属、アルカリ土類金属であり、化学的、生物的動態がまったく異なる。しかしながら、農産物に関してセシウムからストロンチウム量を見積もる際、これは考慮されておらず、不適切である。(そもそも考慮して見積もりを行うための理論があるのかという問題はあるが)
以下に放射性炭素やカリウムの話もあるが、こちらも骨に特異に蓄積するストロンチウムと全身にまんべんなくたまる炭素やカリウムの話を比べるのは適切でない。
そもそもが、最初は「米は全量検査しているからより安全」というロジックであったのに、いつの間にか「見積もれるから(少なくともある程度の統計学的確率で)安全」というロジックにすり替わっていることも問題である。まさに「こいつ100万で壺買うタイプ」が騙されやすそうな論理展開である。
まず、「被曝した場合にできた甲状腺がん」と「なにもなかった場合の甲状腺がん(例えば韓国のスクリーニング検査)」を比べるのは適切でない。前提が異なるからだ。例えば外的要因により短いタイムスパンで成長したがんが存在する可能性がある。それでも検査は症状が出てからでよいかどうかというのは韓国の事案などとは別に議論されるべき問題である。
次に「そもそもが被曝の程度からして甲状腺がんの発生には影響しないことは過去の疫学研究でわかってる」とのことであるが、この手の検査で期待されるのは(少なくとも検査を受ける側が期待するのは)「対象の95%に影響がなかった」ということではなく、「全員に影響がなかった」かどうかを確かめることである。例えば福島の人口から考えて4sigma - 5sigmaの統計は必要だろうが、この確率で低線量被爆に関してものを言っている文献は発見できなかった。存在するならばぜひ教えてほしい。もっとも、じゃあ99.994%大丈夫ですよと言われて全員が納得するかというのはさらに別の問題ではある。