2019-07-06

[] #75-9「M型インフルエンザー」

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ムカイさんは自分電脳と、ネット回線ケーブルに繋いだ。

もっと大掛かりかと思っていたけど、パソコンとほぼ同じやり方なんだな。

「これが“M”とやらの文書か……ではセキュリティ突破する」

ムカイさんによると、方法は割とシンプルらしい。

「まずは第一関門突破だ」

「早いね

「ここまでは序の口。第二関門は脇道から攻めていかなくては……」

今の状況を俺なりに解釈するなら、転校生だと偽って別の学校に入り込んでいる感じだ。

で、今度は裏口を探して、職員用の部屋に潜り込もうとしている。

実際はもっと複雑なことをやっているとは思うけど、傍から見たら絵面が地味なのは同じだ。

「ふんっ……ぬっぐ!」

手強いセキュリティに阻まれたのか、ムカイさんが凄まじい唸り声を上げている。

よく分からないけど、かなりの荒技で突破しようしているっぽい。

こういうのって、もっとクールに、スマートにやるもんだと思ってた。


「……よし、“M”の居場所が分かったぞ」

ムカイさんの唸り声が家の中に響き続けて十数分。

とうとうセキュリティ突破したらしい。

いつまでかかるのか不安になっていた頃だったので丁度よかった。

「すごい! 本当に出来たんだ!」

「待ってろ。今、地図に印をつけてやる」

そう言って、近くにあった引き出しから、ペン地図を取り出した。

そこはアナログなんだな。

「ほら、ここだ」

「意外と近いんだね」

“M”の居場所地球の裏側とかだったら、どう連絡しようかなんて考えていたけれど、その手間は省けそうだ。

それにしても、本当にここから近い場所だな。

「ん? というか、ここって……」

そこは俺の知っている場所だった。

必然的に“M”が何者かも分かり、その事実鳥肌が立った。

「……よし、早速ここへ向かうよ」

「ワレも同行すべきなのだが、充電せねばならん。太陽光だけでは賄うえん。」

ムカイさんはエネルギーをかなり消耗してしまったようで、今にも止まりそうなくらい動きがぎこちない。

「うん、大丈夫ありがとうムカイさん」

正直、“M”の正体が分かった今となっては、むしろ俺一人のほうが都合が良かった。


…………

俺は報告のため、タイナイの家をまた訪ねた。

「あれ、また来たんだ。忘れ物?」

「“M”の正体が分かった」

「えー、本当に?」

随分と無駄な遠回りをした。

もうこれ以上、面倒なプロセスはごめんだ。

走り疲れていた俺は、勿体つけずにその名を告げた。

「……タイナイが“M”なんだろ」

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