起きた頃には台風は過ぎ去っていた。
どうせまたろくでもない電話だろうと思いながら、8コール目くらいでしぶしぶ受話器を取る。
「先日おたくに面接に行ったAの母親ですが!」とすでにちょっとだけキレている。
電話を取って後悔しなかったことはないが、今回は特に後悔すべき相手にあたってしまった。
「店長いない?」
「何で誰でもできる仕事にうちのAが落とされないと行けないの?」
「あなたなんてどうせ何の目標もなくアルバイトしてるだけなんでしょ?未来ある若者に社会経験を積ませなさい」
「お客様の気持ちを知るにはお客様の話に耳を傾けることが重要なの」
「うちの子は立派にB大学に通って、成績だってトップクラスなんだから」
「今この地域があるのは代々続くうちの先祖のおかげなの。それをわかった上で判断しなさい」
他にも色々な嫌味と自慢話を言ってきた気がする。
店長がいないばかりに、30分くらい電話に付き合わされてしまった。
一丁前に筋が通ったクレーマーよりはムカつかないし対応も楽だったけど、トンデモ度ではダントツだ。