2024-08-19

量子ベイズに基づく熱力学第二法則証明

この証明では、次の2つの不等式を示す:

1. 観測エントロピーを減少させる:

Σₖ pₖ S(ρₖ) ≤ S(ρ)

2. デコヒーレンスエントロピーを増加させる:

S(ρ) ≤ S(ρ ◦ E)

ここで、S(ρ) は密度行列 ρ のエントロピー、pₖ はそれぞれの観測結果の確率、E はデコヒーレンスを表す行列である

1. 観測によるエントロピーの減少の証明

まず、観測は次のように表現される:

ρ → ρₖ = (Pₖ ρ Pₖ) / pₖ

pₖ = tr(Pₖ ρ)

ここで、Pₖ は完全直交射影演算子の集合であり、Σₖ Pₖ = I を満たす。また、エントロピー一般に凹関数 h(x) を用いて次のように定義される:

S(ρ) = tr[h(ρ)]

観測後のエントロピー期待値は次のように表される:

⟨S⟩ = Σₖ pₖ S(ρₖ) = Σₖ pₖ tr[h(ρₖ)]

この期待値が初期状態エントロピー S(ρ) よりも小さい、すなわち次の不等式が成り立つことを示す:

Σₖ pₖ S(ρₖ) ≤ S(ρ)

主要化とは、あるベクトル λ が別のベクトル μ を主要化する (λ ≺ μ) とき、次の不等式が成り立つことを意味する:

Σᵢ h(λᵢ) ≤ Σᵢ h(μᵢ)

ここで、λ(ρ) は密度行列 ρ の固有値ベクトルである。もし λ(ρₖ) ≺ λ(ρ) が成立するならば、観測後のエントロピー S(ρₖ) が元のエントロピー S(ρ) よりも小さいことが示される。

1. 観測後の状態 ρₖ は、次の形式を取る:

ρₖ = (Pₖ ρ Pₖ) / pₖ

pₖ = tr(Pₖ ρ)

2. 観測後のエントロピー期待値は次のように書ける:

Σₖ pₖ S(ρₖ) = Σₖ pₖ tr[h(ρₖ)]

3. 一方で、元のエントロピー S(ρ) は次のように表される:

S(ρ) = tr[h(ρ)]

4. ここで、主要化の結果を利用すると、次の不等式が成り立つ:

λ(ρₖ) ≺ λ(ρ)

5. この不等式に基づき、次のエントロピー不等式が得られる:

Σₖ pₖ S(ρₖ) ≤ S(ρ)

これにより、観測後のエントロピーが元のエントロピーよりも小さいことが証明された。

2. デコヒーレンスによるエントロピーの増加の証明

次に、デコヒーレンスは次のように表現される:

ρ → ρ ◦ E

ここで、E はデコヒーレンス行列で、その要素は Eᵢⱼ = ⟨εⱼ | εᵢ⟩ である。この操作はSchur積と呼ばれ、行列対応する要素ごとに積を取る操作である

デコヒーレンス後のエントロピーが増加することを次の不等式で示す:

S(ρ) ≤ S(ρ ◦ E)

この証明も、主要化の結果に基づいている。具体的には、次のように進める:

1. デコヒーレンス後の密度行列 ρ ◦ E の固有値ベクトル λ(ρ ◦ E) が、元の密度行列 ρ の固有値ベクトル λ(ρ) を主要化する:

λ(ρ ◦ E) ≺ λ(ρ)

2. 主要化に基づき、次のエントロピー不等式が成り立つ:

S(ρ) ≤ S(ρ ◦ E)

これにより、デコヒーレンスエントロピーを増加させることが証明された。

結論

以上の2つの不等式により、定理が次のように証明された:

Σₖ pₖ S(ρₖ) ≤ S(ρ) ≤ S(ρ ◦ E)

この証明により、観測エントロピーを減少させ、デコヒーレンスエントロピーを増加させることが確定された。

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