オフィス街を歩けば感じられるのは、人間の構築・秩序化への願望。直線により作られるビルのシルエットは直線的で、自然から遠く離れた造形だ。
これらの建築は、計画的に施工されなければ作れない。計画性、論理的思考、工学、科学。発展してきた学問と積み上げられた技術の結晶だ。
一方で、その街中を歩く自分の心は、そうした構築的な状態からほど遠く、人間関係や男女関係の悩みでいっぱいだ。それらは計画しても実現できるとは限らず、理性でコントロールできる範囲も限られる。容赦や体格、年齢、ホルモンバランス、セラトニン分泌。要素を分解し、一定の調整ができたとしても、根本的に計画・構築することができない要素群。
現代の悩みは、秩序と自然、両方の能力を求められることへの戸惑いかもしれない。計画的に人生を進めながら、流動的な人間関係を乗りこなすことを求められる。相反するかもしれない力の方向性を操り、両方で優れた結果を残した人が成功者とみなされる。