これは、焼きコルクで顔を黒塗りにした白人の芸人たちが、黒人の会話やユーモア、歌やダンスの物真似をするショーである。
アメリカではそれまで大衆芸能といえば、ヨーロッパの伝統を引きずったものが主流を占めていたが、
国産の芸能として登場したミンストレル・ショーが1840年代に人気を集め、その後半世紀にわたって最もポピュラーな娯楽として発展していくことになる。
皮肉にもアメリカが抱える奴隷制度という問題が、オリジナルな大衆芸能を生みだす基盤となったわけだ。
このミンストレル・ショーは、アメリカの歴史のなかで実に様々な分野に多大な影響を及ぼしていく。
このショーは、黒人に対して白人がいだくイメージの原型を作りあげ、それが皮肉なドラマを生みだすのだ。
南北戦争で解放された黒人たちがショー・ビジネスの世界に進出してきたとき、
彼らの多くは白人の社会に受け入れられるために、褐色の素顔を黒塗りにし、純粋な自分たちの芸ではなく、白人が作った黒人のイメージを模倣しなければならなかった。