2021-12-16

工場であった怖い話「裏」

先日、とある工場で起きた怖い話

 

繁忙期にはい製造が追いつかなくなったため、事務である私も現場に駆り出されることになった。

現場に入ると痩せて青白い顔をした女性が待っており

「Aさんは・・・こちらのライン・・・箱詰めされた部品・・・運送用のダンボールにつめて・・・ください」

と蚊の鳴くような声で説明をしてくれる。

続けて「かならず・・・裏をチェックして・・・くださいね」という。

裏? 裏の何をチェックするのだろうか。

女性に尋ねようとするが、別のラインから声がかかった女性は「よろしく・・・ねがいしま・・・」と言い残し去っていってしまった。

仕方なくラインに入り、流れてくる箱を取り上げ、裏面を見る。

真っ白だ。真っ白な箱なのだ

首をひねりながら、そっと私の横のライン女性を見る。

彼女はつまらなそうな顔で、コンベアから箱を取り上げ裏面をちらっと見てダンボールに収めていく。

からない。何を見ているのかまったくわからない。

しかたなくそのまま、箱詰めを続ける。いくら見ても真っ白。

面倒になった私は裏面を見ずにドンドンダンボールに箱を詰め込んでいった。

すると隣から「裏、見てますか?」と声をかかる。

「え?」と顔を上げると、隣のライン女性が「裏、ちゃんと見てくださいね」と念を押してくる。

「何を見るんですか?」と尋ねると「ですから、裏です」とだけ答えるとまた作業に戻ってしまった。

しかたなく裏を見る。真っ白だ。詰める。取り上げる。裏を見る。真っ白。詰める。

いったい何を見ているのだろうか。

 

そうして4時間ほどして私は解放された。

 

翌日、事務所に戻った私は品証の同期の元へと向かった。

「昨日ラインに入ったんだけどさ」と私。

「あぁ、助っ人?大変だったね」と彼。

「そうなんだけど〇〇の箱詰めだったんだけど、裏を見ろって言われて見てはいたんだけど、あれは何を見てるの?」

そう聞く私に彼は腕を組んで少し首をかしげるとこう言った。

 

「そりゃ、裏だよ」

 

おわり。

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