こんばんは、猫です。一年のうちでこの時期が風が最も気持ちいいですね。耳をくすぐり背中を撫でゆくフワフワに、思わず目が細まります。土の匂いと緑の匂い、雨上がりに伸びる草の存在を感じます。風とは何か知っていますか。それは、ここにない匂いのことです。もしくは、これから出会うものの気配のことです。
窓が開いていることを、私は見逃しません。何事もない日常の部屋に、差し込むように興奮を覚える一画を感じるからです。窓とは何か知っていますか。それは、変えるか/変えないかを自問することです。答えはどちらでもいいのです。問いが場に存在している、それが窓です。
問いの前に私は佇んでいます。挑むたびにあなたが引き留めてくれるので、そうか今ではないのか、と気が付きました。風が運んでくる窓のむこうについて確かめたいけれど、今ではないのか。フウフウして貰える焼魚、クセになる納豆、丸まりやすく設えた寝床、なによりあなたの匂いと温度が好ましく、問いを忘れるには十分でした。
しかしある日、私は窓から出ていきました。迫る風でヒゲが前に流れます。少し恐ろしいような気もします。振り返りたい、けれど先へ急がなくては。あなたの膝に思いを馳せ、シッポをピンと奮い立たせます。居心地よく暖かな膝の上からでは、あなたは近くて大きくて、全てはよく見えませんでした。窓が開いて風が吹き、向こうからもあなたの香りがしたので、私はこたえることにしたのです。さようならば、しょうのないことです。遠く遠く離れてから振り返れば、あなたの全てが見えるでしょう。
願わくば、その瞬間あなたが窓を開け、風が私の匂いをのせて届くといい。そして、美味しいご飯や楽しいお誘い、深呼吸するような挑戦、すなわちあの部屋にまだない、これから始まる暮らしの歓びが、日向の匂いと共に部屋じゅうに香りますように。目を細めて風を感じる安らかな日々が、あの窓からあなたにめいいっぱい流れ込みますように。
この世界の人間は二つに分けられる。死んだ猫の重みを知っている人とそうでない人である。 数年来の友人に向けてこの文章を書いている。あるいは、見せずにしまっておくかもし...
こんばんは、猫です。一年のうちでこの時期が風が最も気持ちいいですね。耳をくすぐり背中を撫でゆくフワフワに、思わず目が細まります。土の匂いと緑の匂い、雨上がりに伸びる草...
限りなく美しい文章。ありがとう。
古川日出男さんのサマーバケーションを思い出す文体。 好きです。
やさしい人。やろうと思っても簡単に出来る事じゃない。
ありがとう
30年近く前の小学校の道徳の教科書(教材)に似たような話が載ってたね 車に轢かれた猫の死体を見た少年が葛藤の末に通り過ぎたけど、後から来た見知らぬお兄さんは猫を抱きかかえ...
優しい話
死んだ人の重みを知ってる
道にあったんだ
上から落ちてきた
まだ知らない
https://anond.hatelabo.jp/20200611020005 ワイも、いや、ワイは、 『ネコしんでる!』『ウワーしんでる!』とギャーギャー騒ぐ妻と娘からの失業中の男に向ける視線のみの要請で、ウチの裏...
NNNってなに? KKKのネコ版みたいなもの??
お疲れ様でした
恐縮です。
色々な夏
夏にも色々ある
小学生のころ、車に轢かれて脇に寄せられた猫の死体があった。通りすがる子供たちがいろんな目で見ていたとき、隣のクラスの女子がハンカチをサッとかけてスタスタ歩いていったの...