鏡は像を"前後に"反転させる。
では、何故我々人間は鏡像を見て「左右に反転している」と認識するのか?
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我々がある対象物を見て「まっすぐ正しく見える」と認識するとき、実はその対象物は自分に対して左右逆に置かれている。
絵画のモナリザを"まっすぐ"見るとき、自分(視点)と同一方向に絵を置く馬鹿はいない。それでは額縁の裏側を見ることになってしまう。「正しく」見るためには、必ず「ひっくり返して」自分と向かい合うように置くのである。このとき、私とモナリザは左右反転の関係にある。左右逆なのに違和感を感じないのは、ひっくり返すとき同時に前後も逆になっているからである。(三次元空間においてオブジェクトを2回反転する事で元の形に戻る事は直感的に理解できるかと思う)
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前後と左右は真実と逆。上下だけは真実の通り。この状態で初めて人は対象物を「正しい方向で見ている」と認識する。その状態の物を「正しいはずの物」として我々の脳はインプットしている。
モナリザ、招き猫、紙に書かれた文字、自分自身のコピー…対象物がなんであれ同じ事だ。
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鏡は物を前後に反転するが、左右には反転してくれない。左右に真実をありのまま写してしまう。だから我々の脳は「普段見ている(そして脳内にインプットされた)正しいはずの姿」と鏡像を比較して、左右を逆だと認識する。
間違っているのは鏡ではない。我々の脳の方なのだ。