2019-09-14

中秋の明月らしいね

昔、当時特に仲の良かった友人に誘われ、大学の同期達と連れ立って池のほとりの運動公園に遊びに行ったことがあった。みんなで外でバレーボールでもしようや、という集まりだったんだけど、私は行きの途中で自転車のチェーンに網(荷物キャリアに固定する用)を巻き込んでしまい、集団から外れて一人自転車と格闘していた。

うわ取れねえ!!帰りどうすんだ!!とアホ丸出しで騒いでいた私に、同期の一人が親切にもハサミを貸してくれたので、「日が傾いてきて手元が見えない…」とか思いながら、楽しそうにはしゃぐ集団を横目に一人チョキチョキと絡まった網を切っていた。ようやく網を取り外せたのは太陽が沈みきろうとしていた頃だった。ハサミを返しに行こうと辺りを見回すと、集団から離れて、ハサミを貸してくれた同期が、私を誘ってくれた友人と二人並んで芝生に腰を下ろしている後ろ姿を見た。

その背中を見た瞬間、人間関係機微に疎すぎる私でも、ああこの二人そういうことなんだな。となぜか察しがついた。

そもそも、引っ込み思案なところがある友人がこういう集まりに参加すると聞いた時に、珍しいな、と思ってはいたが、おおかたその友人を狙っている奴から誘われたものの、慣れない集まりに飛び込むのは不安から私にも声を掛けたのだろう。

なんとなく二人に声を掛けるのも躊躇われて、一人ハサミを握ってしばらくそのままつっ立っていた。薄暗い空を眺めながら、星ってキレイだなと初めて感じた。

数週間後、その二人が交際を始めた、という話を聞いた。

なぜかは知らんが、その後数日間呆然と過ごしていた。

あれから10年近くが経った。二人はそのまま順調に交際を続けて大学卒業した。先日、お互いの社会人としての生活がようやく安定してきたので、年明けに結婚式を挙げるつもりだ、という報せを受け取った。

私は未だに大学に残っている。当時の記憶が薄らぐたび、あの日の星空は輝きを増し続けている。

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