今までの形だけの面談と比べて明らかにガチなオーラが満ちていた。
遥か高みにいる上司と直近の上司とが目配せをし、そして直近の上司の方が頷いてから口を開いた。
「そろそろ君を昇進させようと思っている」
期日が告げられた。
「昇進する以上は社会人として、部下を持つ身としてより一層の努力を求む」
そういった内容の話が淡々と進む。
私は小さく震えていた。
今の状態でも上司達に助けられギリギリなのにここから部下を持てるのかと。
昇進までの残り時間は少ない。
それまでに急成長を遂げられなければ私の立場は崖っぷちに立たされる。
この会社で一度昇進されて、それから下の立場に戻った人は居ないと聞く。
ならば、上の立場に耐えられなかった人は、階段を踏み外した人、踊り場でカーブしきれずに転んだ人は、どうなるのか。
消えていくのだろう。
追い出されるか、逃げ出すか、消えていくのだ。
恐ろしい。
時間はもう残されていない。
自分の成長を信じる以外もはや道は残っていない。
やれるのか私。
「やるしかない」
こんな言葉など、今まで散々やってきた人間が唱える分には呪いでしか無いのではないかと感じた。
人にこういった言葉をかけるのはもう辞めよう。
本当に無責任だった。