「まあ、こんなもんだろう」
シューゴさんにしては随分とマトモな謝罪だったようで、一応はつつがなく終了したらしい。
「完璧ではありませんが、これでいいでしょう」
「そもそも完璧な謝罪なんて存在しない。後は世間が勝手に折に触れればいい」
シューゴさんは慣れないことで疲れた様子だったが、何事もなかったように普段の仕事も担当したらしい。
「……といった話だ」
父にそんな話をされて、俺はリアクションに困った。
俺はシューゴさんという人を大して知らないし、関心もない。
その人が謝罪をしようがしまいが、そして謝罪の内容が良くても悪くても、俺にはどうでもいいことだった。
「なぜ俺にそんな話を?」
「自分というものを社会でどう在るか見せるのに、謝罪というものは分かりやすい指標なのさ」
「それは……謝罪するかどうかってこと? それとも謝罪の仕方がってこと?」
「うーん……? 是非を求められて謝罪をして、その謝罪自体にも是非が求められるなら、謝罪という概念そのものがないほうがシンプルに思えるんだけど」
俺の言葉に、父は目を丸くさせる。
そして徐々に頬を緩ませると、とうとう声を上げて笑ってみせた。
「ははは、そりゃそうだ。そもそも謝らないで済むのが、一番いいに決まってる。ある意味で完璧な謝罪だ」
自分ではそのつもりはなかったが、どうやらかなり変なことを言ってしまったらしい。
挿入歌:「アポロジー・イメージ」 歌:シューゴ 作詞・作曲:シューゴ おはようございます 挨拶は大事 この度はご足労いただき まずは労うこと大事 どうでもいいこと? 実...
父が働く会社での話だ。 父の会社にはシューゴという人がいて、この人は会社の顔とも言うべき立場にある。 ただ、この人の言動はヘイトを広めやすい性質があった。 大抵の場合は...