村上海賊の娘を読んだ。読みやすい歴史エンターテイメント小説だった。海戦の終結が切なかった。
正直なところ、一巻を読んだ時点ではあんまり面白そうな感じはしなかった。物語やキャラクターはとても優れていたのだけれど、頻繁に出てくる現代との相違や、メートル法表記などのせいで没入感が削がれていたのが原因だった。
また大規模な戦がはじまっていなかったのも理由に挙げられると思う。まるまる一巻使っているのに、舞台の説明と登場人物の紹介だけに終始するのは(もちろんそれだけじゃないんだけど)いただけなかった。
でも、二巻以降はすごい。陸戦から始まり、ちょっとしたインターバルを挟んでから大々的な海戦へと展開していく。土煙がもうもうと立ちのぼり、磯のにおいがぷんぷんと立ち込める中、魅力的な登場人物たちが戦場を闊歩していく。
凄惨極まりない戦場がたて続けに描かれるのだけれど、この物語はそこにユーモアを落としこんでくるところが素敵。現代の価値観からでは受け入れられない狂人ばかりが登場するのに、どいつもこいつも痛快で清々しい生き様を見せてくれるのもよかった。
最終盤では主要な人物が死んでいくんだけど、終わりが近いこともあって、妙に物悲しく感じてしまった。泉州の海賊が死んでいく様なんかは捨て台詞のひょうきんさから笑ってしまったほどだったのに。