2016-04-27

自分で足をつらせることができる、選ばれし者

2010年頃のことだった。

まだ中学生だった私は、ある日

足の裏に力を込めることで、

足をつらせることができる能力を手にした。

意図せず足をつるのとは違い、

自分で足をつらせるということは快感だ。

緊張からの弛緩、その瞬間には至福がある。

その能力は、誰が教えるわけでもなく

まりにも自然に身についた。

まだ中学生だった私は、

当然誰もがこの能力を使えると信じていた。

足に疲労物質が蓄積し、体が回復を求めるとき

私は足をつらせては、その心地よさに酔いしれたものだ。

しかし、大人になるにつれて、

この能力が誰しもに与えられているものではないことに気づいた。

まるで、標準語だと思っていた話し言葉が、

自分地域特有方言と知るように。

そのうえ、たとえこ能力が使えたとしても

多くの者にとってには痛みにしかならない。

意味がわからない」「Мですか?」と、

心無い言葉を浴びせられることも少なくはなかった。

この能力には謎が多い。

未知の力に怯えながらも、やめることができない

この能力を得し者の性なのだろうかーーー

なぜ、足なのか?

なぜ、この痛みを気持ちよく感じるのか

なぜ、痛みが引いたあと、疲れが抜けるように感じられるのか―――

賢者グーグルをたずねたが、あの彼すらそれを知らない。

いったい、ほかに誰がこの謎を解き明かすことができようか。

スマホ画面を前に、私はただ絶望するしかなかった。

そして今日疲れた体を癒すため、

足をつらせ、痛みの余韻にひたりながら、私は眠りにつくのである。 

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